「避寒地」
と聞いて、ピンとくる方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか。
避暑地でしたら、聞いたことがある方がほとんどだと思います。暑さを避けるために夏でも冷涼な気候の、別荘などが並ぶ閑静な場所を思い浮かべる方も多いかもしれません。
アメリカでは、寒さを避けるために、暖かい場所に移動して休暇を過ごしたり、または引っ越しする人々がいます。こういった人々の移動は、不動産・経済にも影響を及ぼしています。
今回は、この避寒について、そして最近の避寒の変化について、皆さんにご紹介させていただきます。
英語で「スノー・バード(Snow Birds)」という言葉があります。
季節によって南北に移動する渡り鳥のように、アメリカ北部または遠くカナダから、冬の寒さを避けるためにアメリカ南部へ移動し、また冬が終わったら北部へ戻っていくという人々を差すニックネームのような言葉だそうです。昔からの定番移動先は、フロリダ州です。
毎年、北部地方から約2百万人もの人々、主にベビーブーマーたちが、南部のビーチエリアなどを訪れ、暖かい冬を楽しんでいます。この間、避寒地の高速道路は北部州各地のナンバープレートを付けた車であふれ、レストランも込み合い、また、長期滞在のために第二の家を購入している人々も多くいるようです。
短期間滞在の観光客が及ぼす経済効果と違い、これだけの人々が長期滞在し、食事・買物をし、不動産を所有している人は不動産関連の税金も払うわけですから、冬の間、滞在先の州経済に及ぼす影響は少なくないと言えます。
フロリダ州だけでなく、テキサス州にも冬季移動する人々がいます。そちらは「ウインター・テキサン(Winter Texan)」、直訳すると“冬季のテキサスの人”、というふうに呼ぶこともあるそうです。こういった、冬に移動してくる多くの人々のために、スノー・バード湾岸マガジン、ウインター・テキサン・タイムズといった、情報交換雑誌まであります。
このスノー・バードという言葉は約100年前から存在します。
多くの人々が毎年、フロリダ州、そしてテキサス州へ移動してきていましたが、最近ではアリゾナ州などの他の暖かい州、そして遠くはコスタリカなどへ訪れる人々も増えてきているようです。
そして、近年では、このスノー・バードの動向に変化が表れてきています。
フロリダ州に滞在していた人々が、元々住んでいた北部への約半分の距離だけ戻る形になる場所、途中のジョージア州、テネシー州、ノースカロライナ州またはサウスカロライナ州等へ移動、または住みつく、という現象が見られ始めています。
こういった、最南部州から北方向へ半分途中までだけ戻った人々のことを「ハーフ・バック(Half Backs)」と呼びます。
アメリカの引越業者の調査によると、フロリダ州への移住者よりも、反対にフロリダ州から出る人々が増えてきている現象がみられており、ここ最近、フロリダ州からの移動先として人気なのはノースカロライナ州及びサウスカロライナ州だそうです。
これから更に数百万人のベビーブーマーたちが退職し、老後を過ごすために引っ越しをする人の数が更に増えていくと予測されます。
これらの人々の動向、それに伴って開発されるコミュニティー、その結果影響を受ける不動産・経済の動きに関心が向けられます。